カメラの手ぶれ補正は、暗い場所や望遠での手持ち撮影を助ける機能です。ただし、動く人や動物を写し止めるには、被写体に合ったシャッター速度が必要。補正の強さだけで、すべてのブレを解決できるわけではありません。
選ぶときは、まず「何を、どんな場面で撮るか」から考えましょう。静止画では手ぶれと被写体ブレの違い、動画では補正モードと画角の変化が判断の軸になります。仕組み、性能表示、実際の設定という順に見ていきます。
- 手ぶれと被写体ブレの見分け方
- 補正方式・5軸・段数の違い
- 三脚・動画で変わる補正設定
- カメラとレンズの組み合わせ条件
カメラの手ぶれ補正の仕組みと必要性
手ぶれ補正で軽減するブレと、被写体ブレの違い

手ぶれは、シャッターが開いている間にカメラが動いて生じるブレです。一方、被写体ブレは、その間に撮られる側が動いて生じるもの。同じようにぼやけて見えても、動いたものが違います。手ぶれ補正は、カメラ側の揺れを軽減するための機能です。
写真を見るときは、背景にも注目してみてください。ニコンの解説では、写真全体がブレた例を手ぶれ、周囲の花は止まっていて風で揺れた花だけがブレた例を被写体ブレとして示しています。キヤノンの人物写真の例でも、背景はブレず、動いた人物だけがブレています。
動く被写体をくっきり写したい場合は、補正の段数より先にシャッター速度を考えます。ニコンの初心者向け解説が挙げる目安は、人なら1/500秒、乗り物・鳥・スポーツなど素早い動きなら1/1000秒。あくまで目安ですが、手ぶれを抑えるための速度とは分けて考えることが大切です。
また、ピントが合っていない状態もブレとは別です。ニコンの作例では、中央の花を撮りたいのに奥の花へピントが合った写真を、ピンボケとして区別しています。ぼやけた写真を見てすぐに補正性能の不足と決めず、カメラの揺れ、被写体の動き、ピント位置を順に見分けましょう。
ボディ内・レンズ内・電子式は何が違う?
違いは、どこで、何を動かして補正するかです。ボディ内手ぶれ補正は、カメラ内部のイメージセンサーを動かす仕組み。レンズ内手ぶれ補正は、レンズの補正光学系を動かして光の方向を調整します。
電子式については、キヤノンのビデオカメラ向けFAQで、画像を比較し、画素をずらして像のずれを補正する方式と説明されています。
| 方式 | 補正の仕組み | 選ぶときに見る点 |
|---|---|---|
| ボディ内 | イメージセンサーを動かす | 補正機能のないレンズへの対応と、使用レンズの条件 |
| レンズ内 | 補正光学系を動かして光の方向を調整 | レンズ自体の補正機能と、ボディとの協調対応 |
| 電子式 | 画像のずれを画像処理で補正 | 動画での画角・画質の変化と、使用できる撮影設定 |
ボディ内補正には、レンズ側に補正機能がなくても利用できる例があります。キヤノンのEOS R6 Mark IIは、IS機構非搭載レンズでもボディー内手ぶれ補正の効果を得られると案内しています。ただし、別の機種やすべてのレンズへ、そのまま対応範囲を広げることはできません。
ボディとレンズが連携する「協調制御」もあります。EOS R6 Mark IIでは、両者でブレを検知・処理し、適切な補正割合を算出して補正を実行します。ここで大切なのは、ボディとレンズの組み合わせ。両方に補正機能があっても協調しないレンズがあり、協調しても最大の補正段数に届かないレンズがあります。
「5軸」と「何段」は別の数字として読む

5軸は、補正する動きの方向を表します。ソニーのα7 IIIの説明では、角度ブレのPitch/Yaw、上下左右へ平行移動するシフトブレのX/Y、レンズの中心を軸に回転するRollの計5軸。角度ブレは望遠で、シフトブレはマクロ撮影などで影響が現れやすいとされています。
一方、「何段」はシャッター速度に換算した補正効果の表示です。シャッター速度を1段遅くすると、シャッターが開いている時間は約2倍になります。ニコンは1/125秒から1/60秒への変更を、その例として説明しています。
軸数は動きの方向、段数は補正効果の大きさを見る数字で、5軸だから5段という意味ではありません。
段数を理解するための仮定の計算です。補正なしで1/200秒が基準だと仮定すると、3段分は露光時間を2倍ずつ3回延ばすため、計算上は1/25秒に相当します。これは特定の製品で1/25秒の撮影が成功する保証ではなく、被写体の動きを止める速度を示すものでもありません。
実際の性能表示は脚注まで読みます。例えば、EOS R6 Mark IIの最大8.0段は、静止画撮影時、RF24-105mm F4 L IS USM装着、焦点距離105mm、Yaw/Pitch方向、CIPA規格準拠という条件です。
購入時期によってはレンズのファームウエア更新も必要。すべてのレンズ、すべての方向、動画でも8.0段という意味にはなりません。
暗所・望遠では役立つ?補正なしで撮る判断も
手ぶれ補正を重視したいのは、暗い場所でシャッター速度を遅くする手持ち撮影や、望遠撮影です。ソニーは、一般的に「1/レンズの焦点距離」秒より遅いと手ぶれが発生しやすいと言われる、と説明しています。
300mmの望遠では1/300秒、24mmの広角では1/24秒という目安で、望遠ほど速い速度が必要になります。
この目安は、撮影環境によって変わるものです。また、ニコンの初心者向け解説では、フルサイズの50mmで1/50秒、同社のAPS-Cサイズでは焦点距離を1.5倍した数値で割り、50mmなら1/75秒としています。焦点距離の数字だけを見て、どのカメラでも同じ速度に固定しないようにしましょう。
補正があれば、この目安より遅い速度でも手ぶれを抑えやすくなります。反対に、補正なしでもシャッター速度を速くし、構え方を整えて手ぶれを抑える方法があります。左手でレンズの下を支え、脇を締めるのがニコンの案内です。
補正機能は手持ち撮影の余裕を増やしますが、撮影の基本と併せて使う機能と考えるとよいでしょう。
暗所でも、静かな風景と動く人物では判断が分かれます。風景の手ぶれを抑えるために速度を遅くできても、人物の動きは残ることがあります。暗い室内で人を撮るなら、補正段数だけを頼りに速度を下げず、被写体の動きを止める速度と写真の明るさを両立させる必要があります。
カメラの手ぶれ補正を撮影場面に合わせて使う
補正をオンにしてもブレるときの見直し方
まずは、写真のどこがブレているかを見て、手ぶれ・被写体ブレ・ピンボケを切り分けます。次にシャッター速度です。ソニーは、手ぶれ補正を有効にしてもブレる場合は、シャッター速度を上げるよう案内しています。補正をオンにしたまま撮り直すだけでなく、速度を変えて結果を比べましょう。
シャッター速度を速くすると、光を取り込む時間は短くなります。写真が暗くなる場合は、F値やISO感度も調整します。ニコンの解説では、暗い場所で速度を確保するためにF値を小さくし、ISO感度はノイズが出ない程度に高くする方法を紹介しています。速度だけを最大にすればよい、という話ではありません。
設定を変えられないときは、レンズ側のスイッチも見ます。ソニーのOSS搭載レンズで手ぶれ補正スイッチがある場合、オン・オフはレンズ側で設定します。カメラのメニューから切り替えようとして「このレンズでは無効です」と表示されても、それだけで補正機能が使えないという意味ではありません。
動く被写体を追うときには、専用モードがある機材もあります。ソニーのMODEスイッチ搭載レンズはMODE2が流し撮り向け、MODE3があるレンズでは不規則に素早く動く被写体のフレーミングを重視します。ニコンZ8は、静止した被写体に「ノーマル」、動きの変化が激しい被写体に「スポーツ」を案内。
三脚では手ぶれ補正を切る?機種ごとの設定

三脚使用時の手ぶれ補正は、すべてのカメラで一律にオフとは言えません。誤動作を避けるためオフを指示する機材がある一方で、オンのモードを推奨する機種もあります。ここは一般的な撮影のコツより、カメラと装着レンズの説明書を優先する箇所です。
| 対象・撮影条件 | メーカーの案内 |
|---|---|
| ソニーのOSSレンズ解説での三脚撮影 | 誤動作のおそれがあるため、手ぶれ補正を「切」にする |
| ソニーILCE-7M4の動画撮影で三脚などを使用 | 誤動作のおそれがあるため、手ぶれ補正をオフにする |
| ニコンZ8の静止画撮影で三脚・一脚を使用 | 「ノーマル」または「スポーツ」を推奨。ただし三脚の種類や撮影条件によっては「しない」が適する場合あり。補正機能付きレンズはレンズの説明書も参照 |
例えばニコンZ8の説明書は、三脚での条件による違いに加え、補正機能付きレンズでは設定が異なる場合があると明記しています。「ニコンだからオン」「三脚だからオフ」とまとめず、型番と撮影条件を対応させて判断してください。
そもそも、補正機能と三脚は完全に置き換わる関係ではありません。ソニーは、シャッター速度、ISO感度、F値などを調整しても望む撮影結果にならない場合に三脚の使用を案内しています。ただし、動く人物などの被写体ブレは三脚だけでは防げません。カメラを固定する必要と、被写体を写し止める必要は別々に考えます。
動画は補正の強さだけでなく画角と制約を見る
動画では、強い補正を選ぶと撮れる範囲が変わることがあります。ソニーILCE-7M4の動画用設定では、「アクティブ」が強い補正効果を得るモード、「スタンダード」が比較的安定した状態で補正するモードです。アクティブにすると画角が狭くなるため、補正効果と一緒に構図も確かめます。
同機では、焦点距離200mm以上ならスタンダードを推奨しています。また、通常動画の記録フレームレートが120pのとき、スロー&クイックモーション動画のフレームレートが120fpsのときは、アクティブを選べません。動画の設定を決める際は、レンズとフレームレートも含めて対応を見ます。
電子式にも、効果と引き換えになる条件があります。キヤノンEOS Kiss M2の動画電子ISは、「する」で映像がやや拡大され、「強」ではより大きな手ぶれを補正できる代わりに、さらに拡大されます。同機の説明書は、映像が粗くなり、ノイズや輝点が目立つことがあるとも案内しています。
EOS Kiss M2では、焦点距離800mmを超えると動画電子ISは機能しません。動画デジタルズームやタイムラプス動画の設定時も選択できず、TS-Eレンズ・魚眼レンズ・他社製レンズでは「しない」を推奨しています。これは同機の条件であり、ほかのカメラの電子式補正へ一律に当てはめるものではありません。
カメラの向きをゆっくり変える撮影にも注意があります。ILCE-7M4は、手持ちでゆっくりパン・チルトすると映像が乱れる可能性があり、気になる場合は補正をオフにするよう案内しています。単に強いモードへ上げるのではなく、撮りたい動きで映像を確かめて設定を決めましょう。
カメラとレンズを選ぶときの対応条件

カメラを選ぶなら、使いたいレンズとの組み合わせから補正機能を見ます。私なら、まず静止画中心か動画中心かを決め、次に手持ちで遅いシャッター速度を使う場面が多いかを考えます。そのうえで、ボディ内補正の有無、レンズ内補正の有無、協調制御の対応を順に確認します。
- 静止画の手持ち撮影:補正機能のないレンズでもボディ側の補正を使えるか
- ボディとレンズの併用:その組み合わせが協調制御に対応するか
- 補正段数の比較:測定レンズ、焦点距離、方向、静止画などの条件と脚注
- 動画撮影:補正モードによる画角変化と、フレームレートなどの制約
- レンズ通信に対応しないレンズ:焦点距離の手動設定など、必要な操作
レンズに補正機能がない場合でも、ボディ内補正の設定が用意されていることがあります。例えばEOS R5では、IS非搭載レンズの使用時にカメラ側でIS機能を設定し、「常時」か「撮影時のみ」を選べます。
ただし、レンズの種類によって十分な効果が得られない場合があり、デジタルシネマレンズ装着時にはカメラのIS機能は働きません。
さらに、EOS R5の焦点距離設定では、レンズ通信非対応のレンズに焦点距離情報を手動設定し、その値に合わせて補正を行えます。この場合は「レンズなしレリーズ」を「する」に設定する条件もあります。「装着できる」と「補正を適切に使える」は分けて確かめたいところです。
機能名の見方も一つ覚えておくと便利です。ソニーのOSSはOptical Steady Shotの略で、レンズ内光学式手ぶれ補正機構を指します。同社の案内では、搭載レンズの名称末尾に「OSS」が付きます。
ボディ側の性能表示だけで選ばず、レンズの商品名と仕様、組み合わせの対応条件まで見ることが、撮りたい場面に合う機材選びにつながります。
カメラの手ぶれ補正と使い分けのまとめ
この記事のまとめです。
- 手ぶれ補正はカメラ側の揺れを軽減する機能。被写体の動きを写し止めるには、動きに合ったシャッター速度が必要
- 写真全体のブレ、動いた被写体だけのブレ、ピント位置の違いを見分けて対処
- ボディ内はセンサー、レンズ内は補正光学系を動かす方式。電子式は画像処理による補正
- 5軸は補正する動きの方向、段数はシャッター速度に換算した補正効果
- 最大の補正段数は、測定レンズ・焦点距離・方向・撮影条件などの脚注とセットで読む
- 暗所や望遠の手持ち撮影で役立つ一方、補正なしでも速いシャッター速度と構え方で手ぶれを抑える方法がある
- 補正をオンにしてもブレる場合は、原因の切り分け、シャッター速度、F値・ISO感度、レンズ側の設定を見直す
- 三脚使用時のオン・オフは機種で異なるため、カメラと装着レンズの説明書を優先
- 動画は強い補正による画角の変化、画質への影響、フレームレートやレンズの制約も考慮
- 機材選びはボディとレンズの組み合わせで判断。協調対応や、通信非対応レンズで必要な設定まで確認
参考にした情報
- OSSってなに?(レンズの手ブレ補正機能) | レンズTIPS | ソニー
- 手ブレ補正:写真用語集|個人|キヤノン
- 手持ち撮影の可能性を広げる手ブレ補正 | 品質への取り組み | キヤノングローバル
- 【シャッタースピードとブレ】被写体ブレと手ブレを抑えて、いい瞬間を写真に残そう! – NICO STOP(ニコストップ)|フォトライフスタイルWEBマガジン
- ILCE-7M4 | ヘルプガイド | 手ブレ補正(動画)
- 手ブレ補正
- 高画質・手ブレ補正 EOS R6 Mark II:レンズ交換式カメラ・レンズ|個人|キヤノン
- キヤノン:製品マニュアル|EOS R5|手ブレ補正(IS機能)設定
- キヤノン:製品マニュアル|EOS Kiss M2|動画電子IS
- 露出 – シャッタースピード | デジタル一眼レフカメラの基礎知識 | 学ぶ | ニコン
- α7 III 特長 : 操作性と信頼性 | デジタル一眼カメラα(アルファ) | ソニー
- 手ブレ:写真用語集|個人|キヤノン
- 【ビデオカメラ・業務用ビデオカメラ】電子式手ブレ補正と光学式手ブレ補正の違い

